近年,移動回数の減少が都市の活性化や地域経済に与える影響が懸念される中,移動中の「寄り道」行動は移動回数の増加に寄与する可能性が指摘されている.一方で,寄り道先の選択には煩雑な情報検索が必要であり,この過程が寄り道行動の障壁となっている.本研究では,寄り道行動を支援するため,既存の路線図作成ツールLOOMを基盤として,決定された経路情報と寄り道先リストをもとにデフォルメ路線図を自動生成する手法を構築した.
提案手法では,事前処理やノード配置の調整,LOOMライブラリの改良を通じて寄り道候補地の情報を視覚的に強調し,利用者が直感的に寄り道先を把握できる路線図を作成可能であることを示した.また,名古屋エリアを対象とした実験では,寄り道先の重畳表示の減少やラベルの視認性向上が確認された.一方で,路線の折れ曲がり数やラベル配置における課題,さらには都市構造がより複雑な地域での適用性については改良の余地があることが明らかとなった.
本研究は,寄り道行動を支援するデフォルメ路線図の生成という新たなアプローチを示し,利用者の移動体験の向上や都市活性化に向けた基礎的な知見を提供するものである.今後,ラベル配置や路線描画のさらなる最適化を図るとともに,複雑な都市構造への適用を検証することで,汎用的な寄り道支援システムとしての発展が期待される.